縄文時代のクズ

先日南島原で行われるJAISAのシンポジウムの会場に向かう車中でクズがいたるところに生えており、そのうち地球はクズに支配されるのではないか?という話題になった。

スマートアグリ・シンポジウムin南島原 参加レポート

スマートアグリ・シンポジウムin南島原 参加レポート2

そこでクズについて考えていこうと思います。

ということでおそらく雑草という考え方が出てきた縄文時代から。

 

第四氷期が終わり、温暖な気候になったことから自然環境は大きく変わります。

世界的な気候の遷移よりいくつかの地域で野生植物の栽培に成功し、人類は採集・遊動生活から定住生活に移り、それと同時に作物栽培を組織的に行う農耕が発生し、農耕を基盤とし発展した文化が農耕文化です。

この時期が日本では縄文時代。

農耕文化には4系統しか存在していないと言われており、根栽農耕文化・サバンナ農耕文化・地中海農耕文化・新大陸農耕文化の4つに大別されます。

それぞれの文化を見てみると日本の縄文時代に行われていたものは根栽農耕文化と思われます。

根栽農耕文化は多年生植物の栄養繁殖で行われるもので、いわゆる種子繁殖を行わない無種子農業が中心で、発祥地は中国南部からマレー半島にわたる地帯。

主食はイモ類が中心で他にはサトウキビ・バナナも多くの地域で食べられていたようです。

バナナも加熱加工して食べられておりイモのような扱いだったと考えられています。

食生活はデンプン・糖質は多いが、たんぱく質を欠きやすく、漁業などが付加的に必要になった為、発達したところも海岸沿い(日本の縄文時代も貝塚がありますね)中心に分布しています。

種子を適地にまき育てる文化と比べると原始的に考えられますが、バナナなど主要品種は染色体が3倍化し種無しになっていて品種改良の程度は非常に高い水準にあり、実際に種子ではなく栄養繁殖器官を選別し増やすクローン繁殖の能力がなければ成り立たないため。鱗茎・塊根・根茎・地下茎・ムカゴなどの栽培特性を理解していたものと考えられます。

おそらく、定住し野生植物の栽培に成功したこの頃から「雑草」という概念が生まれ始めたのではないでしょうか。

雑草とは

食生活と共に変わってくる雑草。

今ではグリーンモンスターと呼ばれるクズもこのころは有用作物。

大雨による被害とグリーンモンスターの関係

デンプンを主食としていると上で紹介しましたがクズも塊根をすりつぶし水にさらすだけで多量にデンプンが得られるクズは当時重要な栄養源だったと考えられます。

さらに縄文時代の名称の由来にもなっている縄文土器に付着する布片の圧痕から編み布の生産もされており、その材料としてもクズは使われています。つまりクズは根から地上部の茎に至るまで利用されており、縄文人にとって非常に有用な植物だったと思われます。


Chris 73 / Wikimedia Commons, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

 

余談ですが、縄文時代には後の弥生時代と比べて争いが比較的ない時代だったとされますがそれはこのイモ類を主食としている点が大きいものと考えられます。

現在のように輸送技術が確立されていない縄文時代では主食のイモ類は重量が大きく腐敗しやすかったためです。

つまり権力により収穫物を収奪、輸送、集中、貯蔵することが困難だったことから、皆農業従事者のような状態でそれ以外の分野の技術が発達しにくい(強大な権力者も育ちにくい)時代だったようです。

 

弥生時代のクズ

江戸時代以降のクズ