和紅茶の定義を品質的意味と語学的意味から考える

国内で作られた紅茶は国産紅茶。

紅茶の中でも日本茶品種で作られたものを和紅茶と呼ぶ。

味や香りといった品質的な意味でも、和食・和服といった和〇という従来から使われてきた単語的にな意味でもそう定義したほうが良いと考える。


日本茶品種と中国種とインド種

紅茶製造にかかわるようになって今では紅茶が好きでいろんな紅茶を飲んではいるが、元々紅茶が好きで紅茶を作り始めたわけではない。

土づくりや施肥管理など栽培に関することを科学的立場から見ていたところ紅茶作りも化学反応だと考え紅茶作りに興味をもった。

他にも様々理由があるが、一番は日本茶を紅茶にしたいと考えたのは世界にない味わいの紅茶を作ることができる可能性があったからだ。

紅茶は日本茶と同じくチャノキから作られる農産加工品である。

同じ茶園同じ茶の木からとれた緑茶と紅茶

紅茶には基本的に二系統あって「中国種(緑茶品種)」か「インド種(紅茶品種)」だ。

紅茶品種と言われるインド種があるからといって中国種が紅茶にできないかというとそんなことはない(最も有名だろうダージリンは中国種)。

茶葉の大きさが見て違うほどに異なる品種だが、成分的にはより暑く日差しの強い場所で育つインド種の方が紫外線などから身を守るためにカテキン類が多く含まれている。

紅茶はこのカテキンを紅茶ポリフェノールに酸化発酵させることで作られる。

カテキン類が多いインド種の方が紅茶に加工しやすい(加工しやすいであって美味しい紅茶が作りやすいとはまた話が別である)。

かわって中国種はカテキン類が少ないため発酵条件を整えないとならず加工が難しい面があるが、渋みが少なく上品な味になる。

そこで考えたのが中国から日本に伝わり、日本人の好みに合うよう品種改良され、そして栽培も工夫されてきた「日本茶」。

最近はお茶離れが深刻ではあるが、中国と日本の喫茶文化はまるで違う。

中国種よりもさらにカテキン含有量が少なく、うま味成分の多いこの日本茶を紅茶にすることができれば全く違った味わいの紅茶になるのではないか?というところが私の紅茶作りの出発点だ。


マックとモスのバーガーほどに違う

割とよくあることだけども、日本茶品種で作った紅茶を紅茶好きな方に飲んでいただいた時に「本当の紅茶はこういうものだ」と有名どころの紅茶を勧められることがある。

これを飲んでこれに近い味や香りにもっていくといいよという好意からくるアドバイスであることがほとんどだが、そもそも日本茶は日本の風土に合わせて選抜育種、そして土づくりや仕立て方をされたチャノキである。

「紅茶」の材料にしているチャノキと「和紅茶」の材料にしているチャノキは、品種や土づくり、栽培法まで加味すると、マックのバーガーとモスのバーガーくらい違う(と自分は考えている)。

どっちがいいとかではなく(個人的にはマックが好きだ)、日本人が自分の好みに変えたらこうなったという話で、それほどに違う品種を元に製造方法は同じとはいえ、元の品種の特性をより出るように紅茶に加工したのが「和紅茶」だ。

これを従来の紅茶に近づけられるように国内でインド種と掛け合わせ日本独自の品種であるとは言えそういったチャノキで「紅茶」に近づけられるように作った「国産紅茶」と「和紅茶」はやはりわけるべきではないかと考える。


日本茶の茶葉を紅茶に加工した「和紅茶」と「紅茶」の違い

紅茶をそんなに日頃飲んでいたわけではないが、紅茶といえば香りの良さと独特の渋みが心地よいので甘いものなどと一緒にいただくと非常に合うイメージを持っていた。

しかし、日本茶の品種を紅茶に加工してみて驚いたのが渋みがほとんど感じられないことだ。

日本人にあわせ渋みが少なくうま味が出るように品種改良、そして土づくりに栽培法がされていたこともあり、紅茶に加工してもそういった特徴が如実に出ていた。

渋みを感じない代わりに茶葉のもつうま味をしっかり感じることができる、砂糖をいれていないにも関わらず甘みを感じるほどだった。

あまりにうま味を感じたことから成分分析をしたところ、残念なことにうま味成分は他の紅茶と有意差は認められなかったが、カテキンは検出されずという結果だった。

煎茶・弊社の和紅茶・紅茶12種に含有されるカテキン類の量mg/100g

本当に全て紅茶ポリフェノールにかわっていたのだ。

渋みがないことでうま味がより感じられるようになったのだろう。

その代わり渋みがないのでボディ感がなく、香りも淡いといった、ある意味「紅茶と言えば」といった特徴が失われる点もある。

これが明確な日本茶品種で作られた紅茶と従来品種で作られてきた紅茶の明確な違いではないだろうか。


和紅茶を日本語的意味から考える

和紅茶は広義の意味で日本で作られた紅茶のことを和紅茶ということがあるが、日本語的に違和感を感じる。

それは和服や和食といった「和〇〇」という単語は色々あるが、いずれもスタイルを表している。

例えば、和服はアメリカの服飾メーカーが着物を作ればそれは「和服」というだろう。

ドイツにある飲食店がご飯・味噌汁・焼き魚などを出せばそれは「和食」というだろう。

日本で作られた紅茶は国産紅茶という表現で充分と考える。


味や香りから紅茶と和紅茶をわける意味

紅茶は渋みや香りがないと良い紅茶ではない、という方がいる。

先日MUSICA TEAでいただいたダージリンは本当に香りがよく衝撃受けるほどによかった。

MUSICA TEAさんへいってきた

そういったものに日頃触れている方からすれば日本茶品種で作った紅茶は香りが少なく、物足りないように感じるはずだ。

ただ、好みや飲むシーンを考えると、両方あっていいのだ。

例えば先日ウイルス性胃腸炎で調子が悪かった時に、如何に香りがいいだろうと普段は心地よいと思っている渋みが胃腸の状態によっては負担になるかもしれない。

そんな時は和紅茶だと美味しくいただけた。

一息するのにリフレッシュで香りも良いものをいただきたい、といった時や、甘いものと、というときは「紅茶」を、といった感じだ。

特に和紅茶は香りが少ない代わりにうま味もしっかり出ているので常飲もいいが、食事とよく合う。

これだけ「日本茶品種で作った紅茶」は特徴が出ているのに、国産の紅茶品種で作ったものまで和紅茶と呼んでしまうと消費者の混乱を招いてしまう恐れすらある。

販売面において名称から中身の推測が付いた方が売りやすいというところからも日本茶品種で作った紅茶が特徴的である以上名称を「和紅茶」とした方が良いと考える。


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