スマートアグリ・シンポジウム南島原での最後のパネルディスカッションで話されたことについて紹介しようと思います。
※参加して記憶に残ったところだけまとめておりますので違うところなどあればご指摘ください。
これからの農業はどうなっていくべきか
⇒減少する農家戸数・増える管理農地への対策、人の手による現場作業の軽減。
株式会社笑農和の下村さん(写真右端)はご自身富山でコメ農家をされており、これからの農業経営で一番の問題は農家戸数の減少と一軒当たりの管理農地の増加に伴い発生する水田の水管理で、それを解決しようとサービスを開発されているとのことでした。
実際に水田では機械化がかなり進んでいるおかげで一軒当たりの管理農地はかなり増えていますがボトルネックとなるのが、その地まで行き、みないといけない水門管理。
これを遠隔でも行うことできるようになることでさらに管理農地が増えると言われています。
そういったことを踏まえ、現状農地まで人が行くことが前提になっている作業を軽減していくこと、そういった作業体系やサービスの利用が鍵になるということでした。
頻発する災害対策
⇒中山間地の農業が鍵
⇒リモート農業で遠隔農地によるリスク分散
近年頻発する災害、記録的短時間豪雨はもう見ない年はないでしょう。
台風も規模は大きくなる一方です。そういった情勢にどういった備えができるのかを伺いました。
印象的だったのはA-nokerの安東さん(写真左端)
実際に佐賀県太良町で農業を営む安東さんは、自ら培ってきたアスパラの栽培技術を仲間に教えフランチャイズ化をしようと考えておられます。
その中で、災害への備えは品種の選定。
アスパラは2月から10月末まで収穫が可能な農産物で、一番価値が高いのは春先。
施設栽培のアスパラにとって一番脅威となる台風は夏以降となるので価値の高いシーズンの影響は受けにくいこと。
被害が大きかったら頭を切り替え、来シーズンの準備に早く入るよう考えます。
さらに、山間地で栽培している為防風林かわりに周囲の林が働いてくれること、平地と異なり、近距離で条件が異なる山間地ならではの特徴が対策になっているとのことでした。
基本的に営農不利地と考えられる中山間地がこのような形で災害対策に役立っているとは本当に驚きました。
技術の発達と共に上で紹介した人の手による現場作業が軽減されるようになれば遠隔地に農地を持つことも可能になり、被災農地以外での生産によりリスクを減らすという意見も聞かれました。
その際スムーズに消費地・被災地へ農産物を流通させる為には、岡安先生(写真中央)の発表された2週間前までに収量を精度よく予測するシステムが役に立ちます。
あらかじめどの産地からどれだけ収量があがりそうだということを市場が把握することで農産物の価格が安定するだけでなく、台風など予測がある程度立てられる災害については効率よく農産物を市場に出すことが可能となります。
農地につけられたセンサー等ITで得られるノウハウは誰のものか?
⇒発明者たる生産者のもの
こちらは参加された農家さんより質問されたものですが、センサーなどが圃場に当たり前にはいるようになってきた現在、そこで得られたデータの所有権についての質問でした。
これについては発明者たる農家のものと回答がありましたが、その点回答があっても企業が本格的に進出してきたら我々農家が培ってきた技術が使われ企業の利益になり、我々農家にとっては利がないのではないか?ということを話されていました。
コーディネートされていた持田さんからは、圃場におかれて得られた情報はただの数字に過ぎず、それをどう使うかは生産に携わる人でないと活用ができない。
さらに、ある一定の水準までは新規就農した人でもそのデータを用いて生産することができると考えられますが、一定以上の水準に達するにはやはりそれだけでは不十分ではないかとお話がありました。
私の方もイベント後にその方とお話しさせていただきましたが、現在データでとれるものは環境も目で見え、体で感じる分だけで、重要な土壌についてのデータは今のところ得る手段は限られていること。
さらに、この南島原だけを見てみても土壌インベントリーやシームレス地質図を見れば様々な地質が入り乱れていることがわかります。
つまり、データがあったとしても土を生かすような栽培は一朝一夕にはできず、土と向き合って仕事をしている農家のレベルにはなかなかなることはできないのではないかとお話しさせていただきました。
パネルディスカッションもあっという間に時間が過ぎ、南島原は改めて農業にアツイところなのだなと実感できました。
途中通ってきた道沿いで半島の北半分と南半分で土の色が違ったりしていたのも印象的でその辺りも後日まとめられたらと考えています。
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