北海道における防風林の効果と現状

減ってきている防風林

北海道に初めていった時に聞いてはいましたが、防風林の高さ長さに圧倒されました。

防風林

北海道ではあちこちに防風林がみられます

しかしその防風林も今では減ってきているようです。

少し前の調査ですが、帯広市内の耕地防風林の総延長距離の調査では平成12年には325キロあったものが平成29年には220キロまで減っています。


防風林は農業経営にとってデメリットが大きい?!

防風林が減っている原因ですが大きく分けると二つありそうです。

1.GPSが入らずスマートトラクターが使いにくい。

2.日陰になり生産性が悪くなる。

北海道のように広大な農地では大型の農機具が普及していますが、それでも畑の向こう側がみえないような広大な農地では直進サポートであったりGPS制御で動く農機が重宝されます。

そんな時に防風林があることでGPSが拾えないとなるとストレスになります。

一枚一枚が広大な北海道の農地

また背の高い防風林があることで農地に日陰ができますし、日当たりが悪いところは水はけが悪くなり作物も育ちにくくなるという点。

どちらも現場の農家からすると目に見えてわかりやすいデメリットであることには間違いありません。


防風林の真の効果

果たして本当に農業の生産性の邪魔をしているのでしょうか?

GPSが拾えないのは防風林のせいかもしれませんが、植物にとって条件不利地になるかというと実際には異なるようです。

防風林の役割

・強風からの園地の保護

・農地の表土保護

・増収効果

1点目の強風から園地を守ってくれるというものについては、防風林について経営的にデメリットだと言われている農家さんの多くも役に立っていると評価していて大半の人が効果を実感しているようです。

果たしてどの程度効果があるのかというと風上側では防風林の高さの5倍程度、風下側ではなんと20倍程度の広さに効果があるそうです。

2点目の農地の表土保護、これはどういったことかというと、農地は一般に上の写真にもあるように耕して土が露出しているところが多くあります。

特に北海道では冷涼な気候ということもあって雑草も生えにくく、一度耕したところはそのまま裸地化している期間が長くなります。

そういった場所に風雨があたると表土が削れて流亡してしまい、貴重な経営資産である表土が薄くなっていってしまいます。

風雨で削られる量は微小ですのですぐには実感できませんが、収量が落ちていき気が付けば地力を回復させるために大変な苦労をしないといけない、ということにもなりかねません。

3点目の増収効果、日陰を作り、湿地を作る防風林がなぜ増収効果なのか?!と思うかもしれませんが、こちらは実際に林業試験場が行った試験で作物はトウモロコシでしたが実際に増収したのだそうです。

内容ですが、防風林があることで風が防げ地温が上昇し根の張りがよくなり日陰による減収を上回り増収したというものでした。

風を防ぐことで地温があがるというのは考えればもっともですが、確かに気温が低い北海道では日中温まった地温を如何に冷やさないかという点は非常に重要なところかなと思います。


防風林の今後

防風林は大きな日陰を圃場に作り、風は確かに防げるだろうけども日光も遮っている、さらに圃場にぬかるみもできて生産性が落ちる。スマートトラクターも導入しにくい。

目に見えるデメリットは色々あります。

しかし、簡単に作ることができない経営資産でもある表土保護という観点からすれば防風林がはたしている役目はかなり大きなものがあります。

防風林がいい悪い、ではなく、一つ一つ分解してケースごとに考えることが重要かなと考えます。

例えば、前の段であげた増収についても比較的水はけがよくない圃場でもよく育つトウモロコシについてはそうかもしれませんが他の作物では違うかもしれません。

防風林による恩恵が大きなところは残し、残すことでのデメリット、例えば日陰であったり湿地に対してはそれに対応した作物を探してみる。

防風林も樹種を変えることで防風効果は若干下がるけれども日光がより当たりやすくなるものを選ぶなど。

また、防風林を切ってしまわざるをえないような場所では草生栽培を導入することで表土を保護するなど、場所に応じて少しずつ変化させる必要はあるのかなと考えます。

1 comment on “北海道における防風林の効果と現状”

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