建蔽率から透水面積率へ、環境面に配慮した建築基準へ

なかなかすごいニュースをみました。

10日関東地方では局所的に豪雨が降ったようですが、マンホールが吹き飛び水柱、までは稀に見るニュースではあるのですが、その後アスファルトが下側から水圧で吹き飛んだというものです。しかもそのアスファルトの欠片が付近を通行していた車に直撃、母子が軽傷を負ったと。

ニュースを見ましたがなかなかに衝撃的な映像でした。

タイトルにしていますが、日本では建物を建てるときに建蔽率というものがあります。


建蔽率とは

建蔽率とは敷地面積に対する建築面積の割合で、建物を建てる際に敷地をどのくらい建物で覆って良いのかを定めたものです。

弊社事務所がある地域ではおよそ50~60%となっています。

敷地面積の50~60%は建物を建てても良いが、40~50%は建物を建ててはいけないということになります。

この建蔽率の目的は「防災」「採光」「通風」「景観」などを考慮して安全で良好な市街地環境を作ることにあります。

1950年の建築基準法で初めて法制度化されたといわれています。

戦後復興、都市再建という中で防災や都市景観を目的として導入されたものですが、諸外国と比べると環境側面で劣っており、温暖化が進む昨今この問題は致命的になりつつあります。


メジャーになりつつある不透水面積率

海外では建蔽率と一緒に定められている似たような制度があります。

それが不透水面積率。

アメリカでは「Impervious Surface Coverage(不透水面積率)」そして「Stormwater Management Ordinance(雨水管理条例)」。

不透水面積率とは雨水を通さない面積が敷地面積の何%までかを制限していて、雨水管理条例は雨水が一気に流出しないよう、透水性舗装やレインガーデンの設置が求められるものです。

ドイツでも「Versiegelungsgrad(舗装率・不透水化率)」があります。

イギリスでも似たような不透水面積について制限が設けられていて、特に新築やリフォーム時庭や駐車場を不透水舗装をする場合は自治体の許可が必要なこともあります。

イギリスの場合は2008年に厳格化されていて、住宅前面を不透水舗装に帰る場合は許可制(無許可で舗装すると違法に)、小規模住宅開発でもSuDS(持続可能な排水システム)導入を強く推奨となっています。


制度の違いの背景は?

おそらく日本の建蔽率は戦後復興の際他の多くの法令がそうであったように欧米のものを手本に導入したと思われますが、法制度の歴史的背景が日本と海外では大きく違ったことから建蔽率という「都市景観」や「都市安全」という見た目だけを輸入したのではないかと考えています。

歴史的背景とは、日本は島国で地理的にも諸外国の影響を受けにくく、良くも悪くも自然と調和し暮らしてきた民族です。

全てのものに神が宿り、自然災害が起きるとその原因を追究するよりも「祟り」として受け入れてきた。

アメリカやヨーロッパといった文明先進地では自然災害や伝染病は国境を関係なく影響があります、場合によっては隣国から攻め込まれる原因になったり、責任の所在をはっきりさせる必要もあったでしょう。

雑草に対しての意識の違いも自然(雑草)と戦ってこなかった日本と諸外国では全く向き合い方がことなります。

雑草管理の国内先進事例、沖縄の性能規定型管理法

日本よりもそういった災害に向き合う必要があったのだと思います。

自然の脅威をリスクをコントロールしようとした結果、雨に関していうと日本のように湿潤な環境ではないのでいかにその場に留めて干ばつに備えるか?も大事だったのかもしれません。

そういった背景から単純に建蔽率だけを定めるのではなく、雨水を如何にその場に留めておくかそれを制度化して環境リスクを低減しようとしたことがあるのだと思います。


温暖化と不透水面積

日本の方が海に囲まれて雨も多いのに氾濫が少ないではないか、と思う方もいると思います。

日本は卓越した土木技術があり、建蔽率だけを設定して雨水を河川に速やかに流したとしてもこれまでは日本の技術が大雨の影響を上回っていたのですが、この数年そうとも言えなくなってきたのだと思います。

インフラ工事を担う現場の方の減少により更新が滞り道路が陥没するニュースは度々目にするようになりました。

また線状降水帯が発生して河川が氾濫することもこの10年で何度も目にするようになりました。

排水インフラの整備は確かに大事ですしこれからも行わないといけませんが、一軒一軒の住宅が建蔽率と同時に不透水面積率も考慮し、透水するものに地表面をかえていくことが氾濫防止につながると考えます。

都市部の内水氾濫対策でできること

また緑地率という考え方もあります。

芝などは降雨量のおよそ8割から9割を地下に流し、表面を流れ出て敷地外に出る雨量は10~20%程度にとどめてくれます。

それだけでなく、炭素の固定や蓄熱しにくいことから夜間放射冷却が起き空気の流れが出来て熱帯夜やヒートアイランドを防止する効果もあります。

日本は建蔽率だけでなく不透水面積率を考える時期に来ているのではないかと考えます。

 

個人的に、弊社の事務所近くは九大の跡地開発という大規模な都市計画がされていますが、この設計がこういった世界基準の環境まで見据えた持続可能な排水システムも備えた場所になってほしいと考えております。

 

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