都心部に出没するサルと認識の差異
先日子供が通う学校から連絡メールがまわってきた。
付近でサルが出没したため注意喚起を促すものでした。
実はつい先日も同様のニュースがあり、捕獲されたのち近くの森に離されたのだ。
今回の件もインタビューを受けた人は、町の中に迷い込んでかわいそうだから早く森に帰してあげてほしいというものだった。
農業関係者からすれば近くに放されるなんて迷惑なのでご免こうむりたいところでしょう。
一般の人からすれれば襲われるリスクはあるが実感としてないというところではないでしょうか。
ニュース記事などを見ていると報道カメラに収まっている一般の方は何をしているかというと逃げるどころかスマホを構えサルの写真を近距離からでも撮影している人が少なからずいます。
一方で農産物を生産する農家からすれば、日ごろ食害に悩まされ、その対応に苦慮しています。
イノシシやサルなんかいなければそれが一番いいとも考えているでしょう。
イノシシ・サルも考える頭はもっているので一度人里に降りて味を覚えれば再度美味しいものを求めておりてきます。
今回福岡市内を騒がせているサルと前回騒ぎになったサルは同一個体である可能性も高いでしょうし、都度森に帰していれば若干怖い目に遭うが帰ってこれると判断され徐々に人里に降りる個体が増えるのは目に見えています。
増える被害と農家の心
近年の農作物の被害はどの程度あるのか?統計がとられています。
令和3年6月農林水産省農村振興局の鳥獣被害の現状と対策レポートより
このレポートによれば野生鳥獣による農作物被害額は158億円(令和元年度)。
全体の約7割がシカ・イノシシ・サルとなっています。
158億円もの農産物が被害に遭っている、すごい金額だなぁと額面通りに受け取るかと思いますが、被害はそれ以上に深刻です。
今回の注意喚起のメールにあるように直接的に襲われる可能性があります。
農産物の被害とは別で家屋の被害、事故による自動車を始めとした機器の被害もあります。
何より、生育に応じて現れる病害虫と異なり、収穫時期に突然現れ、忽然と収穫物が消え去ってしまう獣害は農家の心を簡単に折ってしまいます。
鳥獣害で引退する農家と及ぼす影響
引退を考えている後継者不在の農家は獣害がきっかけで離農してしまう人が非常に多いです。
元々後継者もいない農家で細々続けているだけであれば早く引退して別の農業者に譲ってほしいという声もあります。
これは後継者からすれば先祖代々守ってきた農地を余所者には譲れんとしている人が一定数いる為、そのような意見があることもわかりますが、獣害で引退するのは訳が違います。
それは鳥獣害を受ける場所が特異的だからです。
その場所の多くは中山間地でしょう。
山が近いところにある農地は特に鳥獣害の被害を受けます。
ある意味そこに農地があり、集落があるから野生の獣たちは人里までおりてこられないのです。
その防波堤ともなっている境界の農家たちが離農してしまえばより人里に降りて、その境界となった地域が獣害を受けてしまうわけです。