10月28日に有限会社緑の農園(福岡県糸島市)にて篤農家応援プロジェクト 第二回を行いました。
スケジュール等はこちら
こちらのブログは参加した皆さま、協賛いただいている方限定で公開いたします。
今回ご参加いただいた皆様。
一列目左より今泉様(少量多品種野菜)、お子様・早瀬様(養鶏)・長友様(レンコン)
二列目左より今泉様奥様(少量多品種野菜)、お子様・北野様(農業関係事業者)・沖様(少量多品種野菜)・竹井様(農業関係事業者)・西川様(農業関係事業者)
鶏舎見学
トリインフルエンザの対策の為消毒の手順の説明を受けます。
トリインフルエンザ対策として、靴裏・手の消毒、さらに安全を考え靴を覆うビニールをはいて鶏舎に向かいました。
普段は入れない鶏舎の近くまで行き鶏の前にて早瀬社長より養鶏業界のこと、緑の農園の養鶏についてお話を伺います。
ケージ飼育と平飼い養鶏
採卵養鶏には大きく分けて「ケージ飼育」と「平飼い」があり、それぞれメリット・デメリットがあります。
経営的に見るとケージ飼いの方がはるかに効率がよく、低コスト・安定生産・未来予測が立てやすくなっています。
アニマルウェルフェア(※)の観点から平飼いが注目されつつありますが、それもケージ飼育が悪いという見方はせずメリットデメリットをしっかり考えることが重要で、
卵という食材を生産している養鶏業界を考えた際に、ケージ飼いの養鶏がもたらした恩恵(社会的価値)は絶大であり、
低価格でありながら良質な動物性たんぱく質が摂取できる卵を国民に供給することができていること。
さらに、昔は多くの家庭や集落で鶏を飼育していたが、その餌やり等飼育にかかる時間と責任は相当なものでした。
それが効率の良いケージ飼いが発達し、集約化が進んでいった結果、各家庭で鶏を飼うという、生活の中で大きな責任を負うことから解放されたこと。
などがあげられますと早瀬社長は語ります。
緑の農園の養鶏
緑の農園では鶏がのびのびと一番体の調子が良い状態で飼うことが第一の目的であるという理念から平飼い養鶏を選択、その上で経営やコストを疎かにせず、ケージ飼育に近い数字が出るように独自の平飼いノウハウを構築していっています。
言葉も話せず意思疎通ができない鶏にとって何が一番いい状態かは人間の物差しで測るしかありません。
その判断材料として、ニワトリの行動学・社会学を飼養管理の中に取り入れています。
下の写真は「砂浴び」をしている姿ですが、これを人間の目の前で普通に見せてくれることこそ、一番ニワトリがリラックスしている状態であると行動学から推測し、鶏舎環境整備に反映させています。
(砂浴びをする鶏、有限会社緑の農園提供)
人間の物差しについても面白いエピソードを紹介いただきました。
上で記したアニマルウェルフェアはヨーロッパ発祥の考え方ですが、とある国の養豚現場では、最高級の豚を飼育するため、なるべく動かさないように肥育し、手間をかけています。
アニマルウェルフェアの考え方からは「自由がない!豚をとじこめて育てるなんてかわいそうだ!」という声があがりますが、現地の人からすると「動かないで手取り足取り世話をしてもらえるなんて、なんて贅沢なんだ!羨ましい!」という声が聞こえます。
人間による心情面よりも、鶏の行動学に着目し養鶏をしている点も緑の農園の特徴と言えます。
竹内が個人的に着目したところは鶏糞です。
他の養鶏場からでる鶏糞はかなり湿っていて下痢状になっているものが多いのですが、緑の農園の鶏糞は固体状になっています。
鶏舎の中は土の上にもみ殻を敷き、その上に糞が落ちているはずなのですが鶏糞独特の臭さはなく、見た目にも土のようになっています。
(固体状の鶏糞)
ヒトもストレスを感じれば胃腸の調子を壊し、下痢をするのと同じでこれを見たときに鶏の健康状態はいいのだろうなぁと感じた次第です。
さらに、鶏舎に寄ると人を警戒せずに近づいてきます。これも鶏が日ごろヒトは自分たちにとって世話をしてくれているいい動物だと認識しているからでしょう。
(人に寄ってくる鶏舎内の鶏たち)
鶏舎を見るだけでも緑の農園の卵が美味しい理由が分かった気がします。
農業経営で大事なこと
養鶏に限らず、農産物を生産するという仕事は地域資源を活用し行っていく仕事です。
大事なことは地域に受け入れられるものでないといけないということ。
養鶏は一般に公害産業とも言われており、新規での参入が難しい分野になっています。
養鶏につきものの5つの公害
①悪臭・・・鶏糞の臭いや排水などの臭い
②ハエ・・・鶏舎やエサから大量に発生
③騒音・・・鶏の出すストレスからの鳴き声
④汚水・・・鶏糞からにじみ出たものや飲み水の排水
⑤塵埃・・・乾燥した鶏糞やフケや細かな羽毛など
そんな中、緑の農園が縁もゆかりもない糸島の地で養鶏を始め、今の規模まで大きくなってきたのは地域に受け入れてもらえたからと早瀬社長は語ります。
最初に住民説明会を開いたところ、地元から「公害を持ち込むな!」と地元住民からの大反対。
想定よりもはるかに少ない200羽からのスタートならどうか、と説明したところ、それならまぁいいだろうと許可をもらったところから始まった緑の農園の養鶏。
先に紹介した鶏にとって良い環境を与える養鶏手法を続けたところ、5つの公害は起きることなく、結果として品質の良い卵が産まれるようになり「早瀬さんの美味しい卵」と言われるようになったそうです。
鶏に、地域に配慮し、美味しい卵を生産し続けた結果、反対運動をしていた方からも規模を大きくしてもいいのではないか?と申し出があり、徐々に規模拡大していったとのこと。
地域の資源を使う農業だからこそ、地域住民の応援は大きな力になります。
※アニマルウェルフェアについては農水省のページのリンクを以下に記します。
事業承継について
大町公民館に場所を移し、昨年事業承継を行った早瀬社長よりお話をうかがいました。
緑の農園は平成元年より糸島の地で養鶏を始められており、昭和63年に生まれた早瀬社長とほぼ同じ年になっています。
創業者である
父(早瀬憲太郎氏、現会長)はサラリーマン時代の不規則な食生活で体調を壊したことから、子供たちには自分のような生活をしてほしくない。
その為にはまず食べるものだと考え、父が鶏が好きだったということもあり養鶏農家になったといいます。
いつも仕事に対し真剣に向き合いながらも楽しそうにされていたことや、言葉では直接言われたことはないけれどもこの仕事は自分たち子供たちの為という想いを早瀬社長が感じ取っていたことも後を継ごうと思ったきっかけになったのかもしれません。
事業承継で大事なのはタイミング、それも自分から先代にしっかり伝えることが大事だと早瀬さんは語ります。
実際に文書でもその決意を伝えたといいます。
先代が亡くなってから事業承継をしたのでは、経営手法・養鶏手法の引継ぎでの問題の他、取引先やスタッフにも不安を与えることになりかねません。
先代が元気なうちに事業承継を行うことで何かあっても先代がいるから大丈夫という安心感を各方面に与えながら着実に継承をしていくことができます。
「親父を超える」マインドを持たない
事業承継の話で「先代を超える」ということがよく出てきますが、私は先代と並んで評価される経営者を目指したいと早瀬社長は語ります。
養鶏を行う上で大事なことはお客様を見ること、鶏を見ること。
そもそも先代が事業をしていた時と、自分が事業を行っている今とでは時代も、経営環境も異なることから何をもって超えるとするのか、意義があるのか。
そこにはお客様が喜び、理念である鶏の幸せがあるのか?と考えたときに、先代を超えるのではなく、ゼロから今のブランドを作ってきた先代の偉業を認め、それに並ぶように今を頑張ると話されています。
さらに事業承継を30歳と若くして行う決意をしたのは糸島という若い世代が頑張り、背中を見せてくれる年の近い先輩たちが活躍している地域の色も大きく影響しているとのことでした。
地域資源を活用し地域と共にある農家の仕事。
仕事の内容が子供からも見えやすい農家の仕事。
農家の事業承継で大事なことは、地域の人に認められ、次世代を担う人に背中を見せられる仕事ぶりをすること。
ゼロから創業しブランドを作り上げてきた先代と並び評価されるよう事業を続け、その魅力を発信していくことが私の仕事です。と早瀬社長はお話ししてくださいました。
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