農業経営の話で売上を増やすために規模拡大を最初にするのは避けた方が良いという話をよくする。
オススメなのは今の圃場での最大収量を目指す、ということだ。
この話はまた今度するとして、規模拡大で注意したい点を紹介する。
・新規取得した農地の特性による問題
・管理作業の工数増加
大きくはこの二つで、一つ目の新規取得した農地の土壌特性についてだが今まで自分が手塩にかけて作ってきた土と違い土質が違えば土づくりのアプローチも異なる。
その場所にあわせた土づくりの仕方も違い、そして土質が違えば当然管理作業(特に施肥管理だろうか)が変わってくる。
日当たりや風当たりも異なることもあるだろうから同じ作物でも同じようには育たないのだ。
もう一つは管理作業の工数増加。
同じ品目であれば面積が2倍に増えれば作業も2倍、とはならない。
確かに苗づくりなど必ずしも2倍にならない作業もあるかと思うが、そもそも1点目の土づくりや施肥管理が違ってしまった場合は新しく設計しなおさなければならない。
もう一つ純粋に増えるのは圃場間の移動時間だ。
今まで2か所圃場がありその間に位置する畑を入手できればそんなにかわりはしないが、新規に取得した農地に移動しないと当たり前だが作業はできない。
この移動時間もバカにならない。
最後の問題が農業ならではだが、天候に左右される農産物の生産において大事なのは「今やらないといけない作業が突発して起こる」それも割と高頻度で。
こういった突発事案が起きた場合圃場の数が多ければ対処は後手に回り、その土地での生産性はかなり落ちる。
つまり圃場が2倍になったからと言って同じ品質のものが2倍作れる可能性は極めて低く、どちらかといえば単位面積当たりの収量が落ちるのは当たり前で、品質が落ちる可能性も多いにあるということを忘れてはならない。
先日雑草学会のシンポジウムに参加した際に乾田直播をしている農家の話を伺う機会があった。
その中で40haはうまくできたので倍の80haにしたら大失敗したといわれていた。
理由を聞くとやはり管理作業と土質に問題があったようだ。
一つ目は規模拡大した際の田んぼにうまく水がはれなかったというもの。
これは水田稲作独特の問題だが、耕盤が形成されていない、もしくは畔に穴があいていて(モグラなど)そこから漏水したのか、様々理由があるだろうが、畑でも基本的に同じように新しく入手した土地が今までと同じ条件で生産できるとは限らないのだ。
田んぼに水がうまくはれないため何度か圃場にいき水門をあけるという作業が余計に必要になる。
そうすることで「今必要な作業」ができずに後手に回り、単純に水門を余計あけに行く時間以上に生産性が大きく下がってしまったというものだ。
人員に不安がなくなり、規模拡大をと検討するときは、新規の圃場については土質や日当たり、圃場間のアクセス等をしっかり検討してからすることをオススメする。