戦後、葛がクズへ

シリーズで紹介してきたクズと雑草と歴史。今回が最後になります。

縄文時代のクズ

弥生時代のクズ

江戸時代以降のクズ

そして歴史なんか興味ない、今使える技術をという人はこちらをまずご覧ください。

雑草問題の解決とは

それでは最後となる歴史の話です。

1945年、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は、日本における占領政策を本格化させます。

その際幕僚部の専門部局の一つ、天然資源局は農地改革をはじめ農業・林業・漁業・鉱業分野の技術改革を進めます。

専門家の多くはアメリカから任務に就いたとされ、彼らの目には当時の日本の農業や林業が小規模・労働集約的で非近代的(非科学的)なものと見えたでしょう。

このことから、化学肥料・農薬・農業機械など工業機資材、そして欧米型畜産(養鶏・養豚・肥育牛・乳牛)技術の導入を優先施策とし、その普及を時の農林省に委ねたのです。

非生産的土地利用とみなした一千数百万haを超える農用林野と牛馬産草地にスギ・ヒノキ・カラマツの針葉樹を植林(プランテーション)します。

当時の日本にはこのような概念はありませんでしたので、欧米先進国の栽培技術をよしとした日本政府は、大型重機の導入によって農地の拡大や農用林野の改変を一気に進めます。

この事業によって国土の26%に針葉樹の人工林が生まれ、工業資材投入型の作物栽培と輸入飼料による多頭(羽)飼育の畜産事業が始まります。

このような急激な社会経済的変化は列島の農業環境を激変させ雑草、害虫、病害、野鼠、野兎の発生に結びついていきます。

最初に雑草問題が顕在化したのはスギ・ヒノキの造林地です。

アジアモンスーン気候下で長年利用してきたクズやイネ科草本類からなる半自然草地や農用林にスギやヒノキの苗を突然植えれば既存栽培植物が雑草化するのは明らかです。

それに慌てた政府は1962年「林業薬剤協議会」を設立、その仕事はアメリカから導入された除草剤、動物防除薬剤の評価です。

そして、かつて有用資源だったクズ、ササ、ススキや竹を防除する科学薬剤の利用を推進することになります。

しかし、計画的に伐採、植林を行っている人工林と異なり、公共投資によって里山が突然スギ・ヒノキ林にかわったこの林地は、政府の補助金がなくなると共に継続的な管理が行われなくなっていきます。

農地においても、草資源は緑肥としての価値を失い、ただ邪魔なものとして雑草化していきます。

江戸時代以降、作型の専門化が進み、金肥が普及してきたところを後押しする形で急激に近代農業化が進みます。

江戸時代までの流れと決定的に異なるのは、気候区分が違うところからの技術革新です。

江戸時代までは生産性を向上させるといっても国内、同じ気候区分だった為急激な変化は起きにくく、いわば植物の生理生体に沿った形で農業生産システムが変化していっていました。

それを戦後の農業は海外の技術をそのまま移植してしまったがために、栽培で不要になったものを置き去りにしてしまった。

そしてそこには海外にはなかった生育旺盛な在来種(特にクズなど)が存在し、それらが海外にはなかった問題を引き起こして現在に至るという形になります。

 

参考文献:葛とクズ 古来の有用植物がいま強害雑草に

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